2011年5月18日水曜日

たいらばやしか、ひらりんか

メニューを、というかメニューブックを換えまして。
開店当初のはビール会社が作ってくれたやつでA3二つ折りラミネートで、さすがにレイアウトや配色もプロっぽくてみごとなもの。
とはいえ、ウチも開店8ヶ月。いろいろ料理が増えたり消えたりして実体に合わなくなってくる。増えた料理は店内にPOP貼ったり、別紙で対応。
消えた料理は…、メニューブックに白ビニールテープを貼って隠す。これがじじむさいのね。
またビール会社に依頼して作り直せばすればいいんだろうけど、すぐに変更できないのって、先々考えてもじゃまくさいなあ。

で、ファイルブック形式にして、プリンタ出力したのをクリアファイルで綴じ込む形にしました。これならメニューの変更もすぐにできる。

で、これを機に、料理の名称変更をしたのであります。

「せいろ」 → 「ざる」

「せいろ」という関西では耳慣れない呼称がもたらす異化作用で差別化をはかる、みたいな意図を持ってたんですがね、いちいち説明するのんがじゃまくさい。「せいろ」と聞いて「蒸籠」をイメージして「温蕎麦」と思うお客さんもいる。

料理名とは何か?
ある実体を表す記号である。
従って誤解可能性の少ない方がより機能的である。
んじゃあ、もういいや!「ざる」で! (笑)

もっともね、ウチの冷たい蕎麦は「ざる」に盛ってお出しするわけではない。
といって「蒸籠」でもない。
美濃焼の平皿に竹簀をおいてその上に堆く盛っている。ターヘルアナトミア風に言うとフルヘッヘンドさせてるんですが、これは実は槍ヶ岳をイメージしてるのでありますね。
ま、槍ヶ岳の形状の話はともかく 、これは正確には「盛りそば」というべきなのでありましょう。しかし、「もりそば」ってのも関西ではあんまり即時的了解可能性を期待できる用語ではないのでありますね。「もり」と「かけ」の違いだってあんまり日常的な知識ぢゃあないよ。
それに、どうも「もりそば」の「M」音が涼しげじゃあない。「もさい」「もっちゃり」「むしあつい」、それに「むら」「無駄」「無理」のダラリにも共通した「M」!
それに引き替え「S」や「Z」の涼しげなこと。なんといっても「涼しい」=「SuZuSiI」ですからね。「せいろ」とか「ざる」ってのは、すっきり、ざっくり、夏の涼味感たっぷりなわけであります。
そういえば「かけ」ってのも音的にはスパッとしててそんなに暖かい感じがしないのでありますね。「かけ」と聞いてその実体がすぐにイメージできる人はともかく、そうでない人にとっては必ずしも湯気の浮かぶ蕎麦は思い浮かばない。そのへんが「かけ」と「もり」の混同しやすさに繋がっているのではないかと。

と、まあ、個人の恣意的な解釈もかなり含めた思量の結果、ウチの「せいろ」は消えました。
「ざる」です。
亭主の酒量や短期記憶の悪さの話ではありません。誤解なきよう。

んじゃまた
亭主敬白


※ エントリタイトルは落語の「平林」からです。為念。

激闘!出張蕎麦

お知らせしておきましたように5月7日は西御坊さんへ出張。
本願寺山科別院の仏教婦人会さんの「さつきの集い」というイベントで、当店オリジナルの「蓮如蕎麦」を出してほしいとのご要望だったのでした。
店の外、大きな茹で釜がない、材料や物品の移動をどうしよう、等々と様々な不安要因が脳裏をよぎりつつも、本願寺さんに蓮如さんの名前を冠した蕎麦をご注文いただくのですからまさに本望。ということでお引き受け出せていただいたわけなのであります。
参加は20~30名位だろうとのこと。そんだけの数を一気に作るなんてもちろん未知の領域であります。

事前の下見や何回かの打合せでイメージが何とかまとまり、人手も必要物品もメドがつく。5月の連休に入り、最終的な数が決まったとのことで伺うと、45名!とのこと。あらびっくり。
蓮如蕎麦の材料は、蕎麦、大根おろし、鰹削り節、九条ネギ、揚げ蕎麦の実、ぶっかけだし。これにプラスして、かやくご飯とおばんざい。45名分かあ…。だいじょぶかなあ…。

大根おろしは当日お手伝いいただく婦人会の方にフードプロセッサーを持ってきていただくことになりまずは一安心。店では手でおろしていますが流石にこんだけの量をいちどきになるとねえ。
前夜は宴会が入り、その終了後、かやくご飯を2升ほどお釜にセットして、後はひたすらネギ切り、ネギきり。これまでの人生で切ったネギの総量をおそらくは凌駕するであろう分量を切る切る切る。厨房全体ネギの臭いが充満したのでありました。結果的にそんなにいらんかったんですけどね。何せ初めてのことスから。
当日早朝から大晦日以来のそば打ち祭り。1.5kgの玉を三つ。常がせいぜい2つくらいしか打ってないから青息吐息で時間との勝負。繁盛店のそば打ちって毎日こんな感じなんやろうなあ。すごいなあ。

友人やパートさんに加え、居酒屋営業に関しての師匠も手伝いに来てくれ、12時の開始を待つ。現地は西御坊さんの研修会館。それなりの広さの調理スペースがありガスの熱源は3つ。窓から見える裏庭にはツツジが見事であります。
大鍋二つに湯を沸かし、片方は蕎麦茹で用、もう一方は熱湯供給用。鍋の湯温を下げないようすぐに熱湯を茹で鍋に供給するための工夫ですが、果たしてうまいこといくかいな。家庭用のガスコンロぢゃあいかんせん火力が弱すぎる~。

午前中の行事が終わりさて、戦闘開始。
なんか、無我夢中でよく覚えてないなあ。怒濤の勢いってやつですよね。仏教婦人会の役員の皆様にもめちゃめちゃ助けていただいて。終わってみれば「あっ」ちゅう間。

お蕎麦はさいわい、細さが感動的、とかの評価を頂いたみたいで、うれしいかぎりであります。

いいや、なによりかによりね、自分の作った蕎麦が社会的に認知されている、見てくれている人がいる、というのがうれしかったす。
それに、客観的には50人足らずの蕎麦ですからたいしたことないんでしょうけど、経験値と営業規模の極めて小さい蕎麦屋にとっては一大プロジェクトだったわけで、なんとか無事務めることが出来た、ってのもめっさ達成感なのでありますね。
店の外での出張蕎麦。
機材が足らない、勝手が分からない等々、アウェーとしての不利な要素は多々あるわけですが、多くのサポーターの皆さんに助けられさえすれば、なんとかなるんだなあ。皆さんありがとうございました。

いやあ、ホントに良い経験をさせていただいたと思います。ちょっとだけですが自信もつきました。

大震災が起こり、大人災がいっこうに収まらない中、祈りとか信仰とか宗教とかの持つ意味や力を思う日々、蕎麦を媒介にしてこんな体験ができたことを意義深いものと考えています。

んじゃまた
亭主敬白